基礎練
この章の目標
- それぞれの基礎練が「何のための練習か」を説明できる
- メトロノームを使って,自分に合ったテンポで練習できる
- 1日10分の練習メニューを自分で組める
基礎練の考え方
基礎練は,指を動かす体操ではありません。曲の中で使う動きを,取り出してくり返す練習です。「この練習は,何ができるようになるためのものか」を分かってやると,同じ10分でも身に付き方が変わります。
練習① クロマチック(指の独立)
ねらい:4本の指をばらばらに動かす。左手と右手のタイミングをそろえる。
人差し指・中指・薬指・小指を1フレットずつに置き,8分音符で順に弾きます。2本の弦で1小節です。ベースは4弦から1弦までで同じように弾きます。
1弦まで行ったら,1フレット右へずらして 8 → 7 → 6 → 5 の順で戻ります。気を付けること:弾き終わった指を,指板から大きく離さない。ピックは上下交互に(オルタネイト)。
練習② ペンタトニックの上り下り(指板の地図)
ねらい:ポジションの形と,ルートの場所を覚える(第17章)。
8分音符で弾くと,上って下りてちょうど3小節です(最後の A は4分音符)。慣れたら,ルート(A)を弾くときだけ強く弾きます。次に,ポジション2,ポジション5でも同じことをします。
練習③ 4和音のアルペジオ(コードの形)
ねらい:4和音の形(R・3・5・7)を指で覚える。コード進行を見て,構成音がすぐに弾けるようになる。
キー C のダイアトニックコードを,1つずつ R → 3 → 5 → 7 と上がり,5 → 3 → R と戻ります(第5章・第16章)。8分音符で,1つのコードが1小節です(最後の R は4分音符)。
ベースは,5弦を3弦,4弦を2弦,3弦を1弦に読みかえると,同じフレットで弾けます。
形は4種類だけです。どの指が3度で,どの指が7度かを意識しながら弾きます。
| コード | 形の特徴(ルートから見て) |
|---|---|
| △7(C△7,F△7) | 3度は1フレット左,7度は1フレット右 |
| 7(G7) | 3度は1フレット左,7度は同じフレット |
| m7(Dm7,Em7,Am7) | 3度は2フレット左,7度は同じフレット |
| m7♭5(Bm7♭5) | m7 の5度を1フレット左へ |
3本の弦のどこからでも弾けるようにする 上の形は5弦ルートでした。同じ R → 3 → 5 → 7 → 5 → 3 → R を,6弦ルートと4弦ルートでも弾きます。6弦ルートは5弦ルートと同じ形です。4弦ルートは,2弦にかかる7度だけが1フレット右へずれます。
6弦ルート(G,3フレット)
5弦ルート(C,3フレット)
4弦ルート(F,3フレット)
4つの種類を続けて弾くと,「7度が下がる → 3度が下がる → 5度が下がる」の順に1音ずつ変わっていくのが分かります。なれたら,ルートを好きなフレットに移して同じことをします。
次は,キー C のダイアトニックコードを,6弦ルートと5弦ルートを行き来して,せまい範囲で弾く形です。
練習④ コードチェンジ(ギター)
ねらい:次のコードの形を,押さえる前に頭の中で作る。
省略形(第16章)でツーファイブワンを弾き,五度圏の順にキーを変えていきます。1つのコードを2拍ずつ鳴らします。
キーは C → F → B♭ → E♭ と,五度圏を反時計回りに進んでいます。12個のキーを1周するまで続けてみましょう。
練習⑤ ルート・5度・オクターブ(ベース)
ねらい:コードが変わっても,同じ形ですぐに動ける。弦を移るときの右手を安定させる。
8分音符で,同じ形を2回弾いて1小節です。弾いていない弦が鳴らないように,使わない指で軽くふれて音を止めます。
オルタネイトピッキングのコツ
ピックを下へ(ダウン),上へ(アップ)と交互に動かす弾き方をオルタネイトピッキングといいます。8分音符や16分音符を安定して弾くための土台です。
- ピックをかたく握りしめない。腕の振りは,慣れるにつれて小さくしていく。
- 「タカタカ」と声に出しながら弾く。リズムを読みまちがえにくく,アップとダウンがつまらない。
- 休符や伸ばす音のところでも,手は止めずに振り続ける(空ピッキング)。弦に当てないだけで,ダウン・アップの順番は保つ。
- テンポは 70〜80 から始めて,120 を目標にする。
- ブリッジに近いところを弾くと弦がかたく,粒がそろいやすい。
1つの音で,16分音符のどこを弾くかを変える練習です。色の付いたカウントだけ弦に当て,ほかは空ピッキングにします。手はずっと「ダウン・アップ・ダウン・アップ」のままです。
| タカタカ | |
| タカタ・ | |
| タ・タカ | |
| タ・・カ | 見本 |
左手は,1フレットに指1本を割り当てます。親指は,はじめはネックの裏に置き,高い弦を弾くときには自然に上へ出てきます。右手は,弦を移るときに手首だけでなく手全体を上下に動かします。
練習⑥ いろいろなリズムでオルタネイト
1つの音(3弦7フレット)だけで,リズムを変えて弾きます。TAB 譜は1〜3弦の3本だけを書いています。譜面の上の ⊓ はダウン,V はアップです。16分音符の「表(1・&)」はダウン,「裏(e・a)」はアップ,と決めておくと,休符があっても手の動きがくずれにくくなります。
| (a) 4分音符 | (b) 8分音符 |
リズムでオルタネイト (a) | リズムでオルタネイト (b) |
| (c) 3連符 | (d) 16分音符 |
リズムでオルタネイト (c) | リズムでオルタネイト (d) |
| (e) 8分の裏だけ | (f) 16分の裏(e と a)だけ |
リズムでオルタネイト (e) | リズムでオルタネイト (f) |
| (g) 付点8分と16分 | (h) シャッフル(3連の1つ目と3つ目) |
リズムでオルタネイト (g) | リズムでオルタネイト (h) |
- (b) の8分音符はダウンだけで弾いています。手は16分で振り,アップは空ピッキングです。ゆっくりのときは,ダウン・アップで弾く練習もしておきましょう。
- (c) の3連符は,拍ごとにダウンで始まる拍とアップで始まる拍が入れかわります。カウントは「1と た 2と た」と数えます。
- (e)(f) は,表を空ピッキングにして裏だけ当てます。メトロノームを表に聞いて,裏で弾く感覚をつかみます。
- (h) のシャッフルは,3連の2つ目を休んだ形です。はねるリズムのブルースやロックで使います。
練習⑦ ブラッシングを混ぜる
左手を弦にふれたまま力をゆるめて弾くと,音程のない「チャッ」という音になります。これがブラッシングです(譜面では ×)。左手で押さえるところだけ和音が鳴り,それ以外はブラッシングになります。右手は16分で振り続けます。コードは5弦ルートの Dm7 です。
| (a) 拍の頭で鳴らす | (b) 2拍目・4拍目の頭で鳴らす |
ブラッシング (a) | ブラッシング (b) |
| (c) 8分の裏で鳴らす | (d) 混ぜる(第23章 A-3 のリズム) |
ブラッシング (c) | ブラッシング (d) |
- ブラッシングは,左手の力を抜くだけで,弦から指をはなしません。はなすと開放弦が鳴ってしまいます。
- 6弦と1弦は,人さし指の先と腹で軽くふれてミュートしておきます。
- 鳴らす音を大きく,ブラッシングを小さめに弾くと,リズムの形がはっきり聞こえます。
練習⑧ 右手のアルペジオ
和音を1音ずつ弾くアルペジオの,右手の動かし方です。左手はコードを押さえたままにして,音を重ねて響かせます。(a) は音ごとにダウン・アップを入れかえる弾き方,(b) は弦を移る向きにピックを動かす弾き方です。(b) のほうが手の動きは小さくなります。
| (a) ダウン・アップを交互に | (b) 下りはダウン,上りはアップ |
右手のアルペジオ (a) | 右手のアルペジオ (b) |
練習⑨ スウィープの入り口
となりの弦へ同じ向きのピッキングで続けて弾き,1回の動きで流すように鳴らす弾き方をスウィープといいます。3本の弦の3和音から始めます。
- 3回のダウンを「ジャラン」とまとめて弾くのではなく,1音ずつ同じ間隔で鳴るようにします。メトロノーム 60 くらいから始めましょう。
- 弾き終わった弦は,左手の指を浮かせて音を止めます。音が重なると,アルペジオのように響いてしまいます。
- 3弦と2弦が同じフレットに並ぶ形(F,G)は,1本の指を転がすようにして押さえます。
練習⑩ ピッキングハーモニクス
歪ませた音で,ピックと同時に親指の腹を弦にかすらせると,「キュイーン」という高い音が出ます。これがピッキングハーモニクス(P.H.)です。
- ピックを短めに持ち,ピックの先がほんの少しだけ出るようにします。弦を弾いた直後に,親指の腹が弦にふれるようにします。
- 弦を弾く位置で,出る音の高さが変わります。ピックアップの間あたりで,少しずつ位置をずらして探しましょう。
- 歪みが少ないと出にくくなります。ブリッジ側のピックアップを使うと出しやすくなります。
- 出た音をチョーキングやビブラートで揺らすと,よりはっきり聞こえます。
メトロノームの使い方
- 4分で鳴らす:クリック1回に1音(4分音符)→ 2音(8分音符)→ 4音(16分音符)と増やす。
- テンポの上げ方:3回続けてまちがえずに弾けたら,5ずつ上げる。くずれたら戻す。
- 裏で聞く:慣れたら,クリックを拍の表ではない場所に置いて弾く(次の練習⑪)。
練習⑪ クリックを裏で聞く
ねらい:拍を自分の中で数える。走る・もたつくに気づく。ノリ(グルーブ)を体で感じる。
クリックを1・2・3・4の表で聞くと,クリックに合わせにいく弾き方になりがちです。クリックを表以外に置くと,1拍目は自分で感じるしかなくなります。ずれるとすぐに分かるので,リズムの練習としては表で聞くより手ごたえがあります。
| 段階 | クリックの位置 | メトロノームの設定 |
|---|---|---|
| (a) 2・4拍目 | 1 2 3 4(スネアの位置) | テンポを半分にして,鳴った音を「2」「4」と数える |
| (b) 8分の裏 | 1 と 2 と 3 と 4 と | テンポはそのまま。鳴った音を「と」と数える |
弾くものは,6弦開放のブリッジミュートの8分音符など,簡単なもので十分です。(a) ができてから (b) に進みます。いきなり (b) にすると,表と裏が入れかわって聞こえて,どこが1拍目か分からなくなりやすいです。分からなくなったら,声で「1・2・3・4」と数えながら弾きます。
曲の練習の仕方
やってしまいがちなのが,「まだ弾けないのに,原曲のテンポに合わせてとにかく弾き続ける」練習です。まちがえた動きをくり返すと,まちがいのほうが身に付いてしまいます。
- 半分のテンポから始める。弾けたら少しずつ上げる。ときどき原曲のテンポで無理に弾いてみるのも,目標が分かるので役に立つ。
- バッキングは右手から。左手で全部の弦に軽くふれて音を止め(ブラッシング),ストロークの形だけを先に練習する。 それができてから,コードを付けてコードチェンジを練習する。
- ソロは区切る。8分音符のソロなら2拍ずつ,16分音符なら1拍ずつに分けて覚え,あとでつなげる。
- ピッキングの向きを決める。オルタネイトで弾くのか,全部ダウンで弾くのか,休符で空ピッキングを入れるのかを先に決め, 「ダウン・アップ」と声に出しながら練習する。
- コードを先に書きこむ。TAB 譜を数字のまま丸暗記しない。ざっと見て「ここは G のパワーコード」「ここは Am の形」とコードネームを書いておくと, 特徴的なリフとソロだけに集中して練習できる。
押さえ方は分かるのにコードネームが分からないときは,押さえた場所からコードを調べられる「コード逆引き」のサイトが使えます。
練習メニューと記録
1日10分のメニュー例です。バンドの曲で苦手なところに合わせて,入れかえてかまいません。
| 時間 | ギター | ベース |
|---|---|---|
| 2分 | ① クロマチック | ① クロマチック |
| 2分 | ② ペンタトニックの上り下り | ② ペンタトニックの上り下り |
| 3分 | ③ 4和音のアルペジオ | ③ 4和音のアルペジオ |
| 3分 | ④ コードチェンジ | ⑤ ルート・5度・オクターブ |
記録表 弾けたテンポを書きこみましょう。
| 日付 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① クロマチック | ||||||||
| ② ペンタトニック | ||||||||
| ③ アルペジオ | ||||||||
| ④ または ⑤ |
この章のまとめ
- 基礎練は,曲で使う動きを取り出した練習。ねらいを分かってやる。
- メトロノームを鳴らし,きれいに鳴る速さから始める。
- クロマチックは指の独立,ペンタトニックは指板の地図,アルペジオはコードの形。
- リズム練習は,16分の表をダウン,裏をアップと決めて,右手を振り続ける。
- ブラッシング,アルペジオ,スウィープ,ピッキングハーモニクスは,ゆっくり正確に鳴らすところから。
- 短く,毎日続ける。